本園創立者石黒つぎ子は、優れた幼児・児童文学者でもありました。
数多く残した作品の中から、ご紹介します。

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挿し絵:坂本秀子

石黒千晶




四つのめ

 そとは あかるい、はるの ひです。
 けんちゃんは、そとに でました。けれども、しらない まちに、ひっこして きたばかりの けんちゃんには、おともだちが ありません。
 おにわの ぼうぎれを ひろいあげて、こしに さして みました。けれども、おともだちが ないから、つまりません。
「あっ、チューリップが、さいた!」
 この チューリップは、せんに いた おうちの にわで、けんちゃんが せわを して、おおきくした はなです。ひっこしの とき、はちうえに して、もって きたのです。
「もって こられなかったけれど、せん いた おうちの おにわには、ばらも やぐるまそうも、さいて いるだろう。マーガレットも ガーベラも、はるの おうたを、うたって いよう。」
 そうおもうと、けんちゃんは、ともだちも なく ぽっつんと、ひとりさいている チューリップが、かわいそうに なりました。
「ちょうちょが、あそびに きて くれると いいな――あっ、そうだ!」
 けんちゃんは、なにか おもいつくと、いそいで おうちに、かけこみました。
 そして、クレオンと かみを だして、
  が、おともだちが なくて さびしいから、あそびに きて ください。
                  けんいち
  さん
 とかいて、こしに さして いた ぼうきれに、ゆわえつけました。そして それを、おにわに もって いって、チューリップの はちうえの そばに たてました。
「これを みて、ちょうちょが、きっと あそびに くるよ。」
 けんちゃんは、ほんとに もう すぐ ちょうちょが くるように、おもわれました。なんだか、うれしく なりました。
「どこかに かくれて、みて いよう。ぼくが いると、ちょうちょが、えんりょ すると いけないから、さあ、どこに かくれたものかな。」
 ひとりごとを いうと、
「ここに おいでよ、けんいちくん。」
 ちかくで、よぶこえが します。すがたは、みえません。
「へんだな、たしかに、ぼくの なまえを よんだよ。ぼくの なまえを しってる こは、だあれ?」
 けんちゃんが、いいました。
「ぼくだよ。ここ、ここ、ここ、だよ。」


 すぐ ちかくの、へいのあなから めが、わらって のぞいて います。おとなりの、おとこの こです。
「なあんだ、そんな ところで よんでたの? ぼくの なまえ、どうして しってるの?」
「その かみに、かいて ある もの。ね、ここまで おいでよ。ここに かくれて、ちょうちょの くるのを、まとうよね。」
「よしきた!」
 けんちゃんは、おとなみたいに、そう いうと、たたたたたたっと、かけだしました。
 けんちゃんは、その この そばに いくと、くるんと、めを まあるくして、いいました。
「きみ、こんにちは――。」
すると、その こも、いいました。
「きみ、こんにちは――。」
 おんなじ ことを いいました。
 ふたりは、からだを くっつけて、一つの あなから、チューリップの おともだち、ちょうちょの くるのを、まって います。
 ならんだ その こと けんちゃんの、四つの めに、ひらひら、ちょうちょが うつったら どんなに よろこぶ ことでしょう。

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こいぬの とっちちゃん

 こいぬの とっちちゃんは、とっち とっち あるく。ミルクみたいに、けが しろい。おっぽは、まるくて、ぴんと たって います。
 にちようびの あさでした。
「にちようだから、うれしいから、おさんぽ しよう。」
と、とっち とっち とっち、あるいて いきました。げんきに あるいて、いきました。
 みちを あるけば、くさも ある。みちを まがれば はなも ある。
 とっちちゃんは、とっち とっち とっち、たくさん あるいて、ようちえんの にわに きました。
「ここの おにわは、なんと ひろいな。」
 にちようびの ようちえんの にわは、とても ひろくみえたのです。にわには、ぶらんこ、ジャングルジム、すべりだい、それに、おふねみたいな、シィソウも ありました。
 シィソウの いろの、なんと きれいな こと!ぬれているような、みどりいろです。
「きれいな シィソウだな、たべたいみたいに おいしい いろだな。」
 とっちちゃんが、とっち とっち シィソウに、ちかづくと、シィソウに、かみが ぶらさがって いて、じが かいて あります。
「おや、なんか、かいて あるぞ。まるで、うどんを ひいたり ちぢめたり したみたいな じだな。ああ、そうか、とっちちゃん、どうぞ おのりなさい。おかねなんぞ、いりませんって かいて あるんだな。よし、のっかろう。」
 とっちちゃんが、ひょいと シィソウに、あしを かけようと したときです。あたまの うえで、
「おっは、おっは、おっは!」
と、わらいごえ。
「だれだい、ぼくの ことを わらうのは?」
「おひさんだよ、おっは、おっは、おっは!」
「なあんだ、おひさんか、クレヨンで、なぐりがきしたみたいな、おひさんだな。おひさんだって、ぼくみたいな ふとい しっぽが あると、すてきなんだがな。ねえ、おひさん、ぼくと いっしょに、シィソウに のっかって、あそばないか?」
「だって その かみに、じが かいて あるぞ。きみ、べんきょうぎらいだな。じが よめないんだな。」
「よめるさ、そんな もの へっちゃらだ。」
「じあ、よみなさい。」
「うどんは、きらいさ、あの じ、うどんくさいや。」
「おっは、おっは、おっは!じあ、よんで あげる――ペンキ ぬりたて、のっては、いけない。」
「いけない、いけないって、おとなはいうけどさ。ぼくの かあさんだって くちぐせさ。だけど そんな こと ほっとけ、とっち とっち ぴょい!」
 とっちちゃんは、シィソウに、げんきよく のった。おひさんが とめる ひまも、ありや しない。とっちちゃんが、シィソウに のると、シィソウは、まってましたとばかり、ぎいっこ、ぎいっこしゃべりだす。とっちちゃんは、そこで おおよろこび、ぎいっこ ぎいっこや ぎいっこやのって いましたが、これは ふしぎ のればのるほど、おっぽが いたに くっついて ぬるぬる、ぺちゃぺちゃ、きもちがわるい。
「やや、これは いけない。おっぽが いたに くっついた。えいえい ぱっ!」
とっちちゃんは、ぺちゃ くちゃ くっつく おっぽを えいと ふりはなして、シィソウを、とびおりました。
 そして、ようちえんの にわに、さようなら。
とっち とっち とっちと、へんに きもちの わるい おっぽを ゆすりながら、もと きた みちを かえって いきました。
 まがりかどの はなたちが、とっちちゃんの みどりいろに そまった おっぽを みて いいました。
「あの こいぬ、たしかに、さっき ここを とおった いぬさんよ。だけど、おっぽが、みどりいろに そまって いるわ。」
「そめやさんに いって、しっぽの いろあげ、したのかも しれないわ。おしゃれねえ。」
 ですって――。

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きいろいふうせん

 くさの うえで、ひかりが ゆれます。
 すずめの こどもの ど、れ、み、ふぁさんたちが、くさに かくれて かくれんぼを しています。
  ちょちょちょちょ
  もう いくよ、
  いいよ、よったら
  もう いいよ。
 だけど、おにの そさんは、なかなか すがたを みせません。すずめの こどもの、ど、れ、み、ふぁさんたちは、はっぱの かげから、くちばしを あげます。
「ねえね、おにさん、どこを さがして いるのかしら?」
「のんきぼうの そさんの ことだから とおりすがりの、みみずや ありさんたちに、あいさつ してるのよ、きっと――。」
 みんな、こそこそ はなして いると、はなの かげから、そさんの あしおと。
「おにが きた、きた、しいっ、しい!」
 みんなは、いそいで くびを ひっこめました。おにの そさんは のっこのこ、まあるい、きいろな ふうせんを いとでひっぱって、やって きました。そして いきなり でっかい こえで、
「みつけた、みつけた、みいつけたあ!」
 みんな かおを だしました。
「だれが、みつかったの?」
「ぼく?」
「わたし?」
「ぼく?」
「だあれも みつけは、しないさ。」
 みんなは くちを そろえます。
「だあれも? ずるいや そんなの、ずるいやねえ。」
「だけど、ほら これを みつけたんだよ。」
 かくれて いた ど、れ、み、ふぁさんたちは、きいろい ふうせんを みると、ふしぎそうに、よって きました。

「これ、なんて いう もの?」
「なんだか しらない、ふわふわだ。」
「まあるいから きの みかしらん?」
「きの みじゃ ないよ。」
「きいろいから、おひさまの たまあごかな?」
「そんなの ないわ。おひさまが たまごを うむなんて―」
 みんな ふうせんの そばへ かたまって、あたまを みぎへ、ひだりへ ふります。
「なんだろ、なんだろ、なんでしょう?」
 そこへ からすのかあこうが、どこから とんで きたものか、いきなり みんなの まえへ あらわれて、おおきな めだまを ぎょろぎょろ、ぎょろり――
「うごくな、さわるな、うごかすな。その きのみは、こちとらの ものだ!」
「そんなの ずるいや、これは、ぼくが みつけたんだい。」
「みつける まえに かあこうが、きから もいだ。」
「なんの きから もいで きた?」
「もみの き、ももの き、ちょうちょの き。もんくが あるなら くちばしで こい。」
 かあこうは ふとい とがった くちばしを、やたらに、ふりまわします。そして、はねを はばたいて ふうせんに ちかづきます。
「さあ、さあ、さっそく、あじみと ゆこう。おいしそうだな あまそうだ、ほしけりゃ かわだけ くれて やる。」
 かあこうは なんにも いえずに かたまって いる、すずめの こたちを、しりめに かけて、まるい きいろい ものを、ひとつき したと おもった ときです。
 ぷすん ぷおっ!
 と、みょうなおとが して、ふうせんは、けむりのように きえました。
 からすの かあこうも おどろき あわてて、きの ねに ぶつかって、ぴゅうと すがたを けしました。
「あっはっはっは にげた、にげた!」
「くろんぼ、よわむし、あさっておいで!」
 すずめの こどもたちは、はねを ゆすって、わらいました。わらいが ひかりをよぶのか、ひかりが わらいを よぶのか あかるい はるの ひるすぎです。

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なかよし

 ようちえんの あさです。
 おへやの なかに、おかっぱあたま、かりあげあたま、十、十七、二十五と、だんだん あたまの かずが、ふえて いきます。
「おはよう、おはよう、おはようね。」
 うんどうばに とびだして、ぶらんこ する こ、シィソウあそびを する こども、へやに のこって つみきあそび、ままごとあそびを する こども、ようちえんは、にぎやかに うごきはじめます。
 しろい リボンを、あたまに つけた くみちゃんが、かばんをゆすって、ごもんを はいりました。
「おはよう くみちゃん、わたし とっても まってたの。」
 かけて きて、こえを かけたのは、ゆみちゃんです。ゆみちゃんと くみちゃんは、だいの なかよし、めと めが、にっと わらいます。
「きょうは、あなたの おたんじょうびでしょう?」
 ふたりで、かたを ならべて、おへやの ほうに あるきながら、ゆみちゃんが、いいました。
「そうなの。ほうら あたまの しろい りぼんね。かあさんが くみこに、おたんじょうびだからって、つけてくださったの。ちょうちょ、ちょうちょに なあれって――」
「まあ、いい こと! ほんとに ちょうちょが、とまってるみたい!わたしも  あなたに、おいわいを もって きたのよ。ねえ、ちょっと いらっしゃいな。」
 ふたりは、おへやに はいると、ゆみちゃんの どうぐだなから、なんかしら、ちょっと おもそうな まあるい つつみを だして いいました。
「はい、これ、わたしの プレゼント。」
「ありがとう ゆみちゃん、これ、なあに?」
「かえってからの おたのしみ、おかあさんが、ようちえんでは、あけない ほうが いいでしょうって――」
「じあ、それまで ないしょね、ふたりの ひみつね、ありがとうね。」
 くみちゃんは、ゆみちゃんから、つつみを うけとると、二つの てで だいじそうに もって、「くみこ。」と かいた どうぐだなに、それを いれようと した ときです。うしろの ほうから かけて きた おとこの こが、ぼおんと くみちゃんに つきあたって、くみちゃんは、よろよろよろ!とたんに、つつみの なかから、みずが、じゃじゃじゃじゃじゃ!
「あっ、いけない。」
 ゆみちゃんが、かけて きて、つつみを ささえました。
 おおきな こえが、うしろで とびます。
「せんせい、たいへん、くみちゃんが、おしっこ もらしたよお!」
 くみちゃんの かおは、そめたみたいに、まっかに なりました。
 せんせいが、あわてて かけて いらっしゃいました。みんなも、よって きます。
「まあ、まあ!」
 せんせいの めが、くるくるくるくる、まわります。
 ゆみちゃんは、いいました。
「せんせい、これね、おみずが こぼれたの、つつみの なかから――」
「つつみの なかから? そのつつみ、なあに?」
「これはね、わたしから、くみちゃんに あげた、たんじょうびの プレゼントなの。この あいだ、うちの おいけで、きんぎょの あかちゃんが、うまれたので、きんぎょばちに いれて、おかあさんに ことわって、もって きたの。」
 せんせいは、ゆみちゃんの はなしを きくと、やっと わかったと いうように、こっくりを して、おっしゃいました。
「まあ、まあ、なんて いい おはなしなんでしょう。きょうは、くみちゃんの おたんじょうびだったのね。おめでとう、くみちゃん。それに、ゆみちゃんの プレゼントは、にっぽんいちよ。ふたりとも なかよし、いいこね。」
 そう おっしゃる せんせいの めは、よるの そらの かあさんぼしのように、やさしく ゆれたのです。

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もう もう

 はたけの よこを、ちいさな かわが さらさら ながれて いました。
 五がつの あたたかい おひさまが、かわの ながれの ながれまちを たのしく てらして くださいました。かわの ながれの ながれまちの めだかの めちゃんと たちゃんと かちゃんは、それはそれは、なかよしです。
 きょうも なかよく、ながれの みずを すいすい およいで、かくれんぼです。
 めちゃんが、おにです。めを つぶります。
 たちゃんと かちゃんは、すいすいすい! みずをくぐって、たちゃんは みぎへ、かちゃんは ひだりへ――たちゃんは みずもかげ、かちゃんは いしの かげから、いいました。
「もう いいよ。」
「いいよったら、もう いいよ。」
 それそれ、おにさんめだかが、すいすいすい、どこか ここかと、さがします。
「おっぽが、でてるよ、いしの かげ!」
 かちゃんが、みつかったのです。
 みつけられたり みつけたり、五がつの みずは、たのしく ゆれる。おにに なったり かくれたり――。なかよし めだかさんたちの かくれんぼは、いつまでも いつまでも つづくと おもわれましたが、いきなり、
「じゃぶ じゃぶ どぶん!」
と、おおきな おと!おとと いっしょに、みずが さわぎます。おそらまで、一ぺんに、くらく なりました。
 めちゃん、たちゃん、かちゃんは、びっくり して、おっぽを よせました。
「どうした ことかしら?」
「あっ、はしらが、みずに たってるわ。」
「ほんとだ、あっちに 一ぽん、こっちに 一ぽん、三ぼん、四ほん、四ほんも はしらが たったよ。」
 めだかさんたちは、あたまを よせて、いいました。
「四ほんばしらで、おそらが くらい、さて、はて、 一たい なんでしょう。」
「もうもうもう!」
 こんどは ふとい こえが なかよし あたまの まうえから、おちてきました。
「ああ、びっくり した!」
「へんな こえだねえ。」
「四ほんばしらで おそらが くらい。それで、もうもう、なんでしょう?」
 みんなは かんがえても かんがえても、わかりません。
めちゃんが、いいました。
「ねえね、おうちに かえって、おかあさんに きいて みようよ。」
「そうだ、それが いい。」
 めだかの めちゃんと たちゃんと かちゃんは、おかあさんめだかの まって いる、かわの ながれの ながれまちの、それぞれの おうちに おっぽを ならべて、かへって いきました。
 おかあさんなら、なんでも ごぞんじだと、おもったのです。
 さて、さて、めだかの おかあさんたちは、それを なんだと おしえたでしょうか。
 そう、そう、もうもう うしさんですね。
 はたけで はたらいて いた、うしの おじさんが、のどが かわいて おみずが ほしいと、かわの ながれに、おりて きたんですね。

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いっぽんみち

  ちたぱたたん
  ちたぱたたん
  あめが ふるふる
  ちたぱたたん
 ぎんいろの あめが しずかに ふります。ビニールの ものほしひもの りょうがわから でんでんむしの えっちらさんと おっちらさんが あるいて きます。おうちを かついで、えっちら、おっちら、えっちら おっちら、あるいて きます。
 ビニールひもの したがわに、うすむらさきの はなを ひろげて いる、あじさいの はなさんが、はっぱおじさんに、こえを かけました。
「ごらんなさい、はっぱおじさん、かたつむりさんが りょうほうから、あるいて きましたよ。みちは ビニールひとすじみち、ぶつかったら、よける みちは ないのにねえ。」
「そうだ わたしも それを しんぱい していたのさ。ふたりとも、きがつかないのかしら、それとも とちゅうで きが ついても いじを はりあってるのかな。」
 あじさいの はなさんと、はっぱおじさんが、おはなしをして いる ひまに、かたつむりの えっちらさんと おっちらさんは、みちの なかほどで、ばったり であいました。
「そこ どけ えっちら、おとおりだ!」
「そこ どけ おっちら、おとおりだ!」
えっちらさんと おっちらさんは、おうちから あたまを つきだして いいました。
「どかないか、どかないならば、そんならば――。」
 えっちらさんは、あたまから、にょっきり つのを だしました。
「こっちにだって、つのは ある、そっちが、それなら こっちも、こい。」
 あじさいの はなさんが、あわてて こえを かけました。
「でんでんむしさん、けんかは、およしなさいね。」
「そうだ、そうだ、じゃんけんしな、まけたほうが、あともどりって ことにしな。いそぎの ようじゃ あるまいしさ。」
 あじさいの はっぱおじさんも、はっぱを ゆすって いいました。
 けれども、つのをだした えっちらさんと おっちらさんは、どうして なかなか、きくものでは ありません。
「えっちら えっちら、いそぎのようじだ。おばさん ところへ、およばれだ。」
「ぼくは おじさんの ところへ おつかいだ、おっちら おっちら どかないか。」
 とうとう ふたりは つのを つきあう。からだで ぶつかる。なんといっても、みちは ビニールひもの いっぽんみち、ふたりの からだが かさなりあったと おもうと、ころころころん、ぱらぱらぱらん! と、まっさかさまに したに おちて、からだは いたい。おうちは こわれる。ふりたてた つのは、どこへ いったのか――。くっしゅん えーん、くっしゅん えーん、えーんと、ふたりとも、こえを そろえて なきだしました。
「なんだい、ふたりとも、さっきの げんきは どうしたのさ、すんだ ことは、おしまいの しるし。さあさ げんきを だすんだよ。」
「なかないでね。あめが よいひを もって くるわ。」
 あじさい はっぱの おじさんと、うすむらさきの あじさい はなさんは、かわる がわる ふたりを なだめました。
  ちたぱたたん
  ちたぱたたん
  あめは ぎんいろ
  ちたぱたたん
 あめがうたう、ひの ことです。

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五つの 一つ

 たぷろん ろっぷろん!
 おにわの ちいさな いけに あめが ふります。あめは、ちじれたような わを かいて いけじゅうに ひろがります。
 その わの なかで、ふなさんが、じいっと うごかないで、かんがえごとを して いるのです。
「ねえ、なに かんがえてるの? かんがえごとは、からだに どくだよ。なかよく みんなで あそぼうよ。」
 どじょうさんが、よって きて いいました。あとから、きんぎょさんに めだかさんも、およいできました。
「ねえ、ねえ、みんなで あそびましょ。」
「だってねえ。」
 ふなさんは ぷっくと おおきな あぶくを 一つだして いいます。
「ぼくたち 五つは あっちこっちの みずの なかから、すくいあげられた なかよし 五つだろう。それなのに、その うちの 一つ、おたまじゃくしくんが、十かも そのうえも、ぼくたちに、すがたを みせないじゃないか――」
「そうなんだ、ぼくも あんまり おかしいから、二、三にちまえ おたまじゃくしくんが、かくれて いる、いしの そばへ いったのさ。そしたら、いしの おっくから こえがして、ちかよっちゃ だめ、あっちへ いってって いうのさ。」
 どじょうさんも、からだを くねらせて いいます。
 きんぎょさんが、はなびらおっぽを ひらひら させました。
「へんだわねえ。ねえ、みなさんで きょうは、おたまじゃくしさんの ようすを さぐりに、いってみない こと?」
「そうよ、もしも びょうきだったら、なかよしだもの、ほっとけないわよ。」
 めだかさんも、いいました。
 たぷろん、ろぷろん!
 あめの はしる おいけのなかを なかよし 四つが、おっぽを ならべて いそぎます。まもなく、おたまじゃくしさんが、かくれて いる、いしの そばに、つきました。
「こんちは、五つの 一つの なかよしさん、おかげん いかが?」
 くちを そろえて いって みても、へんじが ありません。
「おたまじゃくしくん おてんきの せいで、おつむでも あついの?」
「……あつく ない……」
 みずが、ふるえます。
「じあ、おなかでも、いたむの?」
「……いたく ない……。 」
「へんだねえ、へんよねえ?」
「ぼくだって へんさ。」
 みんなは、わけが わかりません。四つの あたまを よせてると、おいけの みずが、じゃぼんと なって、とんで でたのは 五つの 一つの おたまじゃくしじゃ なくて みずみずした あおい ふくを きた ちいさな かえるさんです。
 みんな おどろいたのなんの―― ふなさんが ごくりと のどを ならして いいました。
「いったい きみは、だれなんだい。ぼくたち なかよし 五つの 一つじゃ ないじゃ ないか。」
「そうだよ、そうだってば、たしかに それに ちがい ないよ。」
ちいさな かえるさんは、いっしょうけんめいです。
「そうなら どうして、あおいの?それに おっぽも ないじゃなくて?」
 きんぎょさんは、はなびらおっぽを、ふるわせます。
「そうなら、どうして、おなかの わきに にょき にょき にょきが、でてるのさ。」
「ねえ、そんな こと いわないでよ、ぼくだって へんなんだから。ゆめを みてるまに、ながい ながい ゆめのまに、こんなに かわって しまったのさ。」
 あおがえるさんが、なきそうに なって そう いった とき、おいけの うえから、うたの こえが します。
  おたまじゃくしに あしが でて
  てが でて きたら おが とれた
  ぴょんぴょんぴょんぴょん
  かっかっかっ
  ぴょんぴょんぴょんぴょん
  かっかっかっ
「あっ、あの うただ、そう いえば、いま おもいだした、ぼく かわに いたころ はっぱの かげで、あんな はなしを きいたよ。」
 こう いったのは、どじょうさんです。どじょうさんは、ずっと せんに きいた おはなしを、たぐりよせるように、はなし つづけます。
「そうそう、おたまじゃくしさんは、おにいさんに なれば、つまり おおきく なれば、かえるさんに なるんだって――それは なんでも、おそらの おてんとさまが、おきめに なったんだって――」
「なあんだ、そうか それで わかった。」
 ふなさんは、にっこり しました。そして かたちの かわった、なかよし 五つの 一つを みあげて いいました。
「よかったねえ、おにいさんに なれて――」
 みんなも、くちを そろえます。
「おめでとう、おめでとう!」
「ありがとう みなさん、ありがとう。」
 かえるさんは、やっと ゆめから さめたように、ぴょんと ひととびとびました。
 いつか あめも あがりました。にげて いく くもの あいだから、おひさまも かおを だして、いけの なかに ひかりの すじを なげました。

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せんたくばさみさん

 せんたくばさみさんたちは、ふだんは、おだいどころの せまい たなの うえで、とろとろとんとろ、ゆめを みて います。でも、
「はい はい、ごよう。」
と、おんなの ひとの、しごとで つよく なった てが、うごいて きて、せんたくばさみさんを、おこして くれると、おおよろこびです。
「きょうも じょうずに、せんたくものを おさえましょう。かぜに とばされないように。」
と、にこにこ しながら、ものほしざおに かけてある、かたちの ちがった、いろや もようの それぞれな せんたくものを、ぱちん ぱちんと はさんで、おさえるのです。
「ごくろうさんだな、せんたくばさみさん。」
 おそらの おひさまは、そう いって にこにこ なさるし、じぷんたちの おさえた、ふくや エプロンが、やがて かわいて おうちの ぼっちやんや おじょうちゃんの、かわいい からだに くっついて、うごくのを みるのは、なにより たのしい ものです。
 くもった あるひの、ことでした。
 せんたくばさみさんたちが、いつものように、せんたくものを おさえる、ごようを して いますと、きたの ほうから、いたずらかぜが、びゅうんと、とんで きました。
「はっはっはっは、ちいさな せんたくばさみたちが せんたくものを、おさえて いるぞ。はっはっはっは、なまいきな。この かぜさまが、ふいて ふきおとせない ものがあると いうのか。よし、ふいて ふいて ふきとばして、かぜさまの ちからを、みせて やろう。」
 いたずらかぜさんは、いいました。
「かぜさん そんなに ふかないで ください。せんたくものが おちて しまったら、おうちの かたが、こまるのです。」
 せんたくばさみさんたちは こえを そろえて、たのみました。けれど、かぜさんは みみも かしません。
 びゅうん びゅうん、ごおっ ごお!
 かぜさんが、ふきだすと はっぱは ざわざわ、きも ゆれます。
 せんたくものも うえへ したへと、うごきます。

けれども せんたくばさみさんたちは、いっしょうけんめい、ちから いっばい、せんたくものを おさえました。
  わたくしたちは
  ちいさいけれど
  ごようを して いる
  しっかり しっかり
  ちからを あわせて
  おさえましょう。
 せんたくばさみさんたちの うたです。みんなは、うたを うたって、ちから いっぱい せいいっぱい、すると かぜさんも いじになって、
 びゅうん、びゅうん、ごおっ ごお!
 これでもか これでもかと、ふいて ふいて ふきあばれます。けれども、ふいても ふいても、せんたくものは とびません。
「へんだな、どうした ことかしらん、ちいさな せんたくばさみの ちからが、ちきゅうを とぶ かぜよりも、つよいなんて――うん、ひょっと したら、せんたくばさみには、かみさまが ついて いるのかも しれないぞ、こわい、こわい、にげろ、にげろ!」
 かぜさんは そう いって、
 びゅうん びゅうん、ごおっ ごお!
 まつばやしの むこうへ とんで にげて いきました

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ゆきのペイント

   さらっしゅ さらっしゅ
   らっしゅっしゅっ
   あの まち あの いえ ぬりましょう
   ゆきの ペイント たのしいな。
 ゆきの こびとさんたちの、うたです。
 しろい ぼうしに しろい ふく、しろい ながぐつを はいた、ゆきの こびとさんたちは、たかい おそらに すんで います。そして よるに なると、おおきな 六かくけいの ぼうえんきょうで、とおい じめんの うえを みるのです。
 すると、とおい じめんの うえの、おうちや ひとの すがたが、つい 五・六メートルさきの ように、はっきり うごいて くるのです。
 こびとの らちゃんが いいました。
「あそこに、いいこが いるぞ。」
 みると、ぼんやり した あかりの したに、ふたりの こどもの おつむが、なかよく むきあって、なんか、おはなし して います。
「みぎへ みぎへ、みぎまわし!」
 ぼうえんきょうを、みぎへまわせば、とおい じめんの うえの おとや、はなしごえも はっきり きこえて くるしかけに なって います。こびとさんたちは、ぼうえんきょうを、みぎへ まわして、ふたりの はなしを ききました。

「おにいちゃん、おかあさんは、こんやも、おそいのねえ。」
「うん、また きっと、おつとめさきの うちに おきゃくさまが あったんだよ。おきゃくさまが あると、いつでも おそいからねえ。」
「おきゃくさまって、くる うちと こない うちが あるの? うちには、ちっとも こないじゃ なくて?」
「そうさ。うちにきたって、ケーキも、こうちゃも ないからさ。それでも、おとうさんが いた ころは、ときどき おきゃくさまが、あったっけ――でも、もう こんな おはなし、よそうや、その うち おかあさんも かえって くるよ。それより、もう ねようよ。ゆみの なかで、おきゃくさまと、あそぼうよ。」

 ここで、ふたりの はなしごえは、ぷっつり きれました。あかりも、うすく なりました。
「ねえ、あの こどもたちの うちに おりて いこうよ。」
「そうだ、そうだ、いこう、いこう。」
 ゆきの こびとさんたちは、それぞれ、からだに にあわない おおきな ブラッシを、かたから さげて、うたを うたいながら したへ したへ、レンズで みた、ふたりの こどもの すんで いる、おうちの ほうへ おりて いきました。
 じめんの うえに おりると、よるは もう おそい。なんにも うごかない よるの まちです。
「ここだね。あの こどもたちの うちは? おや、おかあさんも、もうかえって ねむって いるよ。」
 こびとの さちゃんが、四かくいまどから、なかをのぞいて いいました。おへやの なかでは、ふとんが ふっくら ふくらんで、三つのねがおが、なかよく ならんで います。
「さあ、しごとだ しごとだ。よるの ながれないまに、きれいに ぬろう。」
 ゆきの こびとさんたちは、おおきな ブラッシを うごかしはじめました。たのしく うたを、うたいながら――。
   さらっしゅ さらっしゅ
   らっしゅっしゅ
   ゆきよ とべ とべ はなに なれ
   よいこの ゆめの はなに なれ。
 らっしゅっしゅと、ブラッシの うごいて いく ところ みるまに、おうちは、ぎんの いろ、はだかんぼうの きには、ひかった はなを さかせます。
こびとの しちゃんが、いいました。
「ついでの ことに こわれた 三りんしゃも、なおして おこう。」
 たっちん とっちん、こびとの しちゃんは なおしじょうず、三りんしゃを じょうずに てばやく なおすと、きれいな ぎんの 三りんしゃに なりました。
「さあ、これで いい。」
「なにもかも、きれいに ぬれたね。」
「あしたの あさ、こどもたちが めを さましたら、きっと よろこぶよ。」
 こびとさんたちは、しごとが すむと、とても たのしく なります。
「さあさあ、よの あけないまに、おそらに、かえらなければ―」
 ゆきの こびとさんたちは、ブラッシを かたに かけました。そして ふわふわふわ かるがると、おそらに のぼって、くもの なかに、はいりました。

 まちの あさです。
ふたりの こどもは、めを さましました。
「あっ、ゆきだわ。ねえ、おにいちゃん、わたし ゆめの なかで、ゆきの こびとさんたちと、おうたを うたったの。」
「ぼくもねえ、おにわで、ゆきの こびとさんと じを かいたよ。(ふゆに、まけるな、がんばれ。)って――おおきな、おおきな しろい じだよ。」
 ふたりの こどもは、ひとばんのまに ぬりかえられた、しろい おそとに、ぴゅうんと、とんで でたので ありました。

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